雅楽の箏(楽箏)の特徴と箏曲用箏との違い|はじめての選び方

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日本の伝統音楽の中でも、宮中の儀式や神社の祭礼で奏でられる雅楽には、独特の音色を持つ箏が使われています。普段よく耳にする箏曲(お正月によく流れるあの曲なども含む)の箏とは、見た目は似ていても役割や奏法に違いがあります。この記事では、雅楽で使われる箏「楽箏(がくそう)」の特徴と、現在広く親しまれている箏曲用の箏との違い、そして箏に触れてみたい人向けのアイテム選びのポイントを整理します。

この記事で分かること

  • 雅楽で使われる箏「楽箏」とはどんな楽器か
  • 管絃(雅楽の合奏形式)の中で箏が担う役割
  • 楽箏と、箏曲でよく使われる箏の違い
  • 箏の弦の名称や調弦の考え方
  • 箏をこれから始めたい人向けの選び方のポイント

雅楽における箏「楽箏」とは

箏は奈良時代に大陸から伝わった楽器のひとつとされ、以来、宮廷音楽である雅楽の合奏に取り入れられてきました。雅楽で使われる箏は「楽箏(がくそう・がくごと)」と呼ばれ、現代一般に親しまれている箏曲用の箏とは呼び名を分けて区別されています。

ポイント:箏そのものの基本構造(胴に十三本の弦を張る形)は古くから大きく変わっていませんが、「雅楽の合奏で使う箏」と「独奏・合奏曲として発展した箏」は、使われる場面も奏法の方向性も異なります。この区別を知っておくと、箏の音楽全体の見通しが立てやすくなります。

箏の弦は、演奏者から見て遠い方から「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、斗(と)、為(い)、巾(きん)」という独特の名称で呼ばれます。この呼び方は鎌倉時代の文献にも見られるとされ、古くから変わらず使われてきた伝統的な数え方です。楽譜にもこの名称がそのまま書き込まれるため、箏を学ぶ際にはまずこの弦の呼び名を覚えることが最初の一歩になります。

管絃の中で箏が担う役割

雅楽のうち、楽器だけで演奏する形式を「管絃(かんげん)」と呼びます。管絃は、龍笛(りゅうてき)・篳篥(ひちりき)・笙(しょう)という管楽器三種と、楽箏・楽琵琶という絃楽器二種、さらに鞨鼓(かっこ)・楽太鼓・鉦鼓(しょうこ)という打楽器三種、合わせて八種類の楽器で編成されるのが基本の形とされています。この編成は平安時代に現在のような形に整えられたと伝えられています。

注意点:管絃の中で箏は、旋律楽器というよりも全体の響きを支える存在として用いられる楽器です。篳篥や龍笛が主旋律を担うのに対し、箏と楽琵琶は合奏に彩りと厚みを加える役割を持つと説明されることが多く、現代のポップスでいう「リズムとハーモニーを支える楽器」に近いイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

楽器の種類 含まれる楽器
管楽器 龍笛・篳篥・笙
絃楽器 楽箏・楽琵琶
打楽器 鞨鼓・楽太鼓・鉦鼓

平安時代には、貴族たちが横笛・笙・篳篥・琵琶・箏などを持ち寄り、宮中の催し「御遊(ぎょゆう)」で合奏を楽しんだとも伝えられています。箏は、こうした雅な場の音楽作りに欠かせない楽器として長く愛されてきました。

楽箏と箏曲用の箏との違い

現在、箏曲(独奏や合奏曲として発展してきた箏の音楽)で使われている箏は「俗箏(ぞくそう)」と呼ばれ、雅楽専用の楽箏とは区別されています。どちらも十三本の弦を持つ点は共通していますが、発展してきた文脈が異なるため、調弦の考え方や奏法の工夫に違いが見られるとされています。

知っておきたいこと:箏曲の世界には生田流・山田流といった流派があり、使う爪の形などに違いがあることが知られています。楽箏はこうした箏曲の流派とは別の、雅楽という独立した伝統の中で伝えられてきた楽器だと捉えると整理しやすくなります。

項目 楽箏(雅楽用) 俗箏(箏曲用)
弦の数 十三本 十三本が基本
主な用途 雅楽の合奏(管絃) 独奏・箏曲の合奏
伝承の流れ 宮廷音楽として継承 生田流・山田流など流派で発展

箏には様々な奏法があり、ある研究では20種類を超える奏法が確認されているともいわれています。音程や余韻の変化を奏法によって生み出せることが箏という楽器の大きな魅力であり、雅楽・箏曲いずれの文脈でも、その豊かな表現力が評価されています。

箏に興味を持ったら知っておきたい音階と響き

箏の調弦(弦をどの高さに合わせるか)には複数のパターンがあり、箏曲でよく使われる「平調子」という調弦は、日本的な情景を思わせる響きを持つとして親しまれています。雅楽の楽箏も独自の調弦の考え方を持ち、管絃全体の響きに合うように弦が合わせられます。

豆知識:箏は「こと」とも読みますが、三味線や琴(きん、別系統の絃楽器)と混同されることもあります。箏は胴の上に柱(じ)と呼ばれる可動式の支えを立てて弦の音程を決める楽器で、この柱を動かすことで調弦を変えられる点が大きな特徴です。

箏をはじめてみたい人へ向けたアイテムの選び方

雅楽の楽箏そのものは専門の工房で誂えられることが多く、入手の機会は限られますが、箏曲用の箏や箏の練習用アイテムは、現在では初心者向けのものも含めて数多く販売されています。ここでは、箏に関心を持った人が最初に検討しやすいアイテムをいくつか紹介します。

選ぶときのポイント:本格的な十三絃箏は場所を取るため、まずは短い「卓上箏」や「ミニ箏」から始めて、弦の名称や音の出し方に慣れるという進め方も人気があります。音楽教室や自宅での練習スタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。

初心者向け十三絃箏(練習用箏)

自宅で箏の響きに触れてみたい人には、まず標準的な十三絃の箏が選ばれています。柱の位置を調整しながら音を合わせる作業自体が箏の仕組みを理解する良い機会になるとされ、箏曲入門の定番として評価されています。

注意点:本格的な箏は長さがあるため、設置スペースと持ち運びのしやすさを事前に確認しておくと安心です。

箏用の爪(生田流・山田流タイプ)

箏は右手の指にはめる爪で弦を弾く楽器であり、流派によって爪の形が異なることが知られています。初めて箏に触れる場合は、自分が学ぶ教室や教本の流派に合わせた爪を選ぶことが推奨されています。爪のサイズや素材によって弾きやすさが変わるため、実際に手に合うものを選ぶとよいとされています。

ポイント:爪は箏の音色を大きく左右する消耗品でもあるため、練習を続ける人ほど早めに自分用のものを用意しておくと安心して練習に取り組めます。

箏用の譜面台・チューナー

箏の楽譜は独特の弦名称で書かれているため、譜面を見やすい位置に置ける安定した譜面台があると練習がスムーズになります。また、柱の位置を合わせる際に音程を確認できるチューナーを併用すると、調弦の感覚をつかみやすくなると評価されています。

豆知識:チューナーで音を確認しながら柱を動かす練習を重ねることで、耳で微妙な音程の違いを聞き分ける力が自然と育っていくという声もあります。

雅楽と箏曲、両方の視点から箏を楽しむ

箏という一つの楽器でも、雅楽の合奏で使われる楽箏と、独奏・合奏曲として発展してきた箏曲用の箏とでは、歩んできた歴史も響きの方向性も異なります。両方の背景を知っておくと、コンサートや演奏会で箏の音を聴くときの楽しみ方がぐっと広がります。

まとめのヒント:まずは箏曲用の箏や練習アイテムで弦の名称や調弦の感覚に慣れ、そのうえで雅楽の管絃における箏の響きを聴き比べてみると、箏という楽器への理解が一層深まります。

まとめ

雅楽で使われる箏「楽箏」は、奈良時代に伝わって以来、管絃という合奏形式の中で龍笛・篳篥・笙・楽琵琶・打楽器群とともに響きを作り上げてきた楽器です。現在よく知られている箏曲用の箏(俗箏)とは呼び名も発展の文脈も異なりますが、十三本の弦と独特の弦名称、柱を使った調弦の仕組みなど、基本的な構造は共通しています。これから箏に触れてみたい人は、まず練習用の箏や自分の流派に合った爪、譜面台やチューナーといったアイテムから環境を整え、雅楽と箏曲それぞれの響きの違いを聴き比べながら、箏という楽器の奥深さを楽しんでみてはいかがでしょうか。

雅楽の箏(楽箏)の特徴と箏曲用箏との違い|はじめての選び方をまとめました

雅楽の箏は「楽箏」と呼ばれ、龍笛・篳篥・笙・楽琵琶・打楽器群とともに管絃という合奏を支える役割を担ってきました。現代の箏曲で使われる「俗箏」とは発展の文脈が異なるものの、十三本の弦と独特の弦名称、柱による調弦という基本構造は共通しています。練習用の箏や自分に合った爪、譜面台・チューナーといったアイテムから始めて、雅楽と箏曲それぞれの響きを聴き比べてみることで、箏という楽器への理解がより深まっていくでしょう。